情景

家から数歩のところ、隣の家の前の路上で(いつのまにか)眠っていたところを何者かによって揺すり起こされた。(どのくらい長いこと眠ったのだろう)
そこから見える駄菓子屋は、もう何年も前に店をやめてしまっていたはずなのに、真っ白いロングジャケットのような服を身に纏った男によって再開されていた。
歩いて家へ戻る途中、見知らぬ子供たちが敷地内の庭を駆け回っていた。様子を伺いつつ何か申そうかと思案していると、その子供たちの、どこか心此処に有らずの空気に気がつく。あの白服の男も、私を揺すり起こした男も、この子供たちも、この国の者ではないのだと心のどこかで勘付いた。
家につくと、1歳であったはずの甥が3、4歳の少年に育っていて私に話しかけてくるではないか。「覚えてるよ」と。
甥と一緒に居た女の子は7、8歳くらいで、甥よりもしっかりしたもの言いで驚き顔の私に説明をしてくれる。
 ―いま、西暦何年なの?
 わからない。暦のよみかたが変わったの。
 ―なにがあったの?
 芋から感染が始まって、今ではもうこうなっちゃったの。
芋(いも)から感染が始まって、世界はこんなことになってしまったのか。空の色は赤黒く、空気もおかしい。それにあの人たちは・・・。
家の中にかけてあるカレンダーを見てみると、従来の並びとは異なり、上半期は16、7そこらで一ヶ月が終わっており、下半期は1ヶ月が百何十日も続いている。それらは、どこかかから訪れた者たちによって変えられてしまったらしい。
 甥の育ち具合からみても3年程度しか経っていないようだが、世界は微妙に嫌な感じを含みながら大きく変わったように思える。
 
 若者たちが映画か、またはプロモーションビデオの撮影か、集団で自転車を走らせ、そこへ水しぶきをかけたり手作りのノイズを画面に収めようとして失敗し、四苦八苦している。新しき来訪者たちはCGというものを知らないらしい。