ガキの使い

 20年前ならともかく、今更ヤマザキホウセイみたいな、いじめられっこをいじめても、笑いがうまれるわけがない。いじめられっこ芸人がいじめられても、それはもうあたりまえの事でしかない。
 あそこにあったのは、いじめっこのダウンタウンが力があるから、それに合わせて周りも笑わざるをえないという気味の悪い空気だけ。もしあれで本気で笑ってるやつがおったらそいつは笑いの味覚オンチだと思う。ダウンタウンという老舗のデパートが出した、レトルト食品だらけのおせち料理を食べて、やっぱり老舗の味はうまいなあ〜って言ってるようなもの。
 私は昔松ちゃんの信者だったから思うんだけど、昔はダウンタウンの武器って発想の笑いだったと思う。今まで誰もやらなかった食材で、誰も作った事のない味付けの料理を作り、その新しさが最高におもしろかったんだけど。今回の年末特番は、苦しまぎれに出された定番料理という感じがした。しかもレトルトで賞味期限もとっくに切れていたので悲しかった。
 けして定番料理を否定するわけではない。定番の食材を定番の味付けで最高においしく料理する事だってできるし、レトルト食材だったとしてもその味を上手くごまかす調理だってできると思うんだけど、それはダウンタウンでは不向きだと思う。

 お笑いにとっての敵は、過去のパターンを間違って蓄積してしまう事だと思う。もちろん蓄積していかないといけない部分は必ずあるけれど、その取捨選択が非常にむずかしい。
 さらに蓄積してよいものでも、状況によって使い分けなければいけないものや、旬のものでも賞味期限があって、いつまでも持っていると腐っていくものもあり、それを捨てるタイミングというのも難しい。それにプラスして、作り手の発想や性格も絡んでくる。場の状況に応じた慎重さと大胆さの両方が必要。
 
 笑いは絶妙なバランスの上になりたっている。

 ダウンタウンほどの権力を持ってしまった場合、逆らえる人間やダメ出しできる人間が周りにほとんどいなくなるだろうと思うので、バランスを維持する事はよほどストイックに徹しないかぎりできない事ではないだろうか。